ヨハネス・デ・ムリス著『計量音楽の書』論考一第一章〜第五章

Quilibet in arte practica mensurabilis cantus erudiri mediocriter affectans, ea scribat diligenter que sequuntur summarie compilata secundum magistrum Johannem de Muris.

計量音楽の実際的技術において、誰もが適切に教育されることを目的として、慎重にヨハネス・デ・ムリス師から取られた以下の摘要を書きしるそうと思う。

論考1 Tractatus Primus

Capitulum primum: De quinque partibus prolationis.

第一章:プロラツィオの五つの要素について

Quinque sunt partes prolationis*1, videlicet: Maxima, longa, brevis, semibrevis et minima, ut hic apparet:
[MX,L,B,S,M on staff4]

プロラツィオ*1の要素は五つある、すなわち:マクシマ、ロンガ、ブレヴィス、セミブレヴィスそしてミニマである。ここに明らかなように:
[MX,L,B,S,M on staff4]

註:
*1 prolatio / プロラツィオ
プロラツィオ prolatio のここでの意味は、後で出てくるセミブレヴィスを三つのミニマにわけるか(マヨル・プロラツィオ)、二つにわけるか(ミノル・プロラツィオ)という意味よりずっと一般的な意味で用いられています。[Apel], p.340 によると、「用語プロラツィオはもともと広い意味に、すなわち、メンスーラ(計量)の多様性のための一般的表現として使われた」と書かれています。さらに、この箇所に付けられた註(p.450)によると "The litteral meaning of prolatio is 'manner of delivery.' とあります。 また、当時の様々な論者が、ヴィトリの発明として、それぞれ完全と不完全、テンプスとプロラツィオの四つの組み合わせのメンスーラを、フランス語で 'quatre prolacion'(四つのプロラツィオ)と記述しているそうです。オケゲムのミサ・プロラツィオヌム Missa Prolationum は、こちらが起源でしょう。つまり全ての「プロラツィオ」=メンスーラが(同時に)用いられるミサということです。
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Maxima perfecta valet tres longas sive de modo perfecto, sive de modo imperfecto, si longa sit. De modo perfecto maxima perfecta valet novem tempora, de imperfecto sex, ut hic:
[fig1-1-2]

完全なマクシマは、完全モドゥスにおいても不完全モドゥスにおいても、ロンガ三つ分である。完全モドゥスにおいて、完全なマクシマはテンプス9個分であり、不完全モドゥスにおいてはテンプス6個分である、このように:
[fig1-1-2]

Maxima imperfecta valet duas longas sive sit de modo perfecto sive de imperfecto. Si de modo perfecto valet 6 tempora, si de modo imperfecto quatuor, ut hic:
[fig1-1-3]

不完全なマクシマは、完全モドゥスにおいても不完全モドゥスにおいても、ロンガ二つ分である。完全モドゥスにおいてテンプス6個分、不完全モドゥスにおいてはテンプス4個分である、このように:
[fig1-1-3]

Ex his infertur quod maxima potest esse perfecta longis existentibus imperfectis, et e contrario. Maxima potest esse imperfecta, longis existentibus perfectis.

このことから、ロンガが不完全であっても、マクシマは完全でありうることがしたがう。また逆に、ロンガが完全であっても、マクシマは不完全でありうる。

Longa in modo perfecto valet tres breves, in modo imperfecto duas, ut hic:
[L,B,B,B,L,B,B on staff4]

完全モドゥスにおいて、ロンガはブレヴィス三つ分である。不完全モドゥスにおいて、ブレヴィス二つ分である。このように:
[L,B,B,B,L,B,B on staff4]

Brevis in tempore perfecto valet tres semibreves, in (in)perfecto valet duas, ut hic:
[B,S,S,S,B,S,S on staff4]

完全テンプスにおいてブレヴィスはセミブレヴィス三つ分である。不完全テンプスにおいてブレヴィスはセミブレヴィス二つ分である。このように:
[B,S,S,S,B,S,S on staff4]

Semibrevis in majori prolatione valet tres minimas, in minori duas, ut hic patet per exemplum:
[S,M,M,M,S,M,M on staff4]

マヨル(大)・プロラツィオにおいて、セミブレヴィスはミニマ三つ分であり、ミノル(小)・プロラツィオにおいて、セミブレヴィスはミニマ二つ分である。ここに例として示すように:
[S,M,M,M,S,M,M on staff4]

Capitulum secundum: De duplici modo.

第二章:二通りのモドゥスについて

Nota quod duplex est modus, scilicet perfectus et imperfectus. Perfectus quando longa valet tres breves; imperfectus quando valet duas.

モドゥスには二通りあることに注意せよ。すなわち完全と不完全である。ロンガがブレヴィス三つ分であるとき完全、二つ分であるとき不完全である。

Capitulum tertium: De duplici tempore.

第三章:二通りのテンプスについて

Nota quod duplex est tempus scilicet perfectum et imperfectum. Perfectum quando brevis valet tres semibreves; impefectum quando valet duas.

テンプスには二通りあることに注意せよ。すなわち完全と不完全である。ブレヴィスがセミブレヴィス三つ分のとき完全、二つ分のとき不完全である。

Capitulum quartum: De dupla prolatione.

第四章:二つのプロラツィオについて

Nota quod duplex est prolatio, scilicet perfecta que vocatur major, et imperfecta que vocatur minor. Perfecta sive major prolatio est, quando seimbrevis valet tres minimas. Imperfecta sive minor prolatio est, quando semibrevis valet duas minimas. Exempla patent ex predictis.

プロラツィオには二通りあることの注意せよ。すなわちマヨルと呼ばれる完全と、ミノルと呼ばれる不完全である。セミブレヴィスがミニマ三つ分のとき、完全またはマヨル・プロラツィオである。セミブレヴィスがミニマ二つ分のとき、不完全またはミノル・プロラツィオである。例は前に示している。

Capitulum Quintum: De imperfectione note.

第五章:音符の不完全化について

Insuper est notandum, quod omnis nota perfecta potest imperfici per abstractionem tertie partis sui valoris, et imperfecta perfici per addtionem medie partis suis valoris. Nam perfectio consistit in numero ternario, imperfectio in binario.

上で見たように、全ての完全な音符は、自身の音価の三分の一の部分を切りはなすことにより不完全化でき、不完全な音符は、自身の音価の半分の部分を加えることで完全化できる。というのは、完全は三つ組の数からなり、不完全は二つ組からなるからである。

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Last modified: 2006/9/3