11月14日 (火)  ミント茶のこと

昨日の午後、お嬢さんはかかりつけのお医者さんが開くのを待っていちばんに予約をとり、診察を受けました。

熱はさほどありませんし、食欲もまったくおとろえないのですが、ひたすら鼻に症状が出るのですとうったえたところ、お医者さんはヒスタミン剤と総合感冒薬と、だんだん残りが少なくなってきた発作止めの吸入を処方してくださいました。このうち、ヒスタミン剤は鼻の症状に著しい効果を示し、きょうのお嬢さんはたいへん軽快です。これで、あすからはアーキヴィストの見習いのお仕事にでかけることができます。

きょうは、家で小さな仕事をするあいまに、近くの生鮮食料品店に買い出しにでかけました。

この食料品店は農協がモデル店として直営しているもので、とりわけ野菜と精肉が良質で安価です。きょうは当面の野菜と精肉のほか(農協の直営店なので、この食料品店には魚や魚製品はありません)、スペアミントを買って家に戻りました。

紅茶を煮出すガラスポットに湯をわかし、湯がわいたら適量の氷糖とミントの葉を放り込み、すっとする香りが出たら紅茶葉を入れて火から下ろし、冷蔵庫用のガラスポットに漉し入れるとミント紅茶ができあがります。

中国緑茶とミントで同様のお茶を煎れ、すこし甘味を強くして熱いままいただくのが、アラビア風ミント茶です。中近東一帯では、お茶を「シャイ」、ミントを「ナァナァ」と呼ぶようで、このお茶は「シャイ・ナァナァ」と呼ばれています。

お嬢さんは、いぜんお仕事をしていた史料館の館長さんに、このお茶を教えていただきました。

この史料館でのお仕事はやはりアーキヴィストの見習いで、二年の期限がついたものでしたが、一年目がもうすぐ過ぎそうになったころ、お嬢さんは思いがけず強いストレスを受ける機会があり、お医者さんに通ったりすこし休暇をいただいたりしながら一月ほどを過ごしました。

休暇を終え、そろりそろりと仕事に戻ると、館長さんから館長室に来るようにという伝言が届いていました。もう来ていただかなくても結構です、を言い渡されるのではないかと怖れながら館長室に向かうと、館長さんはお嬢さんにティーバッグの詰め合わせを下さり、こうおっしゃいました。

「ぼくからの命令です。あなたは生きなさい。死んではいけません。これはミントティーで、アラブではシャイ・ナァナァといいます。ものごと、なあなあでいいときもあるんです。だから生きなさい。あと、これは砂糖を入れて飲むのですよ」

席に戻ったお嬢さんは、ティーバッグの詰め合わせのビニールをはがし、紙製のティーバッグをひとつ出してマグに入れ、お湯を注いで砂糖を入れていただきました。そして、そのようにして、お嬢さんはその後の一年間を終えることができました。

いただいたティーバッグの詰め合わせは、なにかあるたびにお守りのように飲んでゆき、いまは一つだけ残してあります。

写真は、いとこの義母の妹夫妻のバニーとガース(のシルエット)です。バニーとガースはモントリオールに住んでおり、料理の本を書いたり、息子たちがレストランで出している料理の監修や、そこで売られている「バニーおばさんのジャム」のような製品の監修をつとめたりしています。

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