6月16日 (金)  料理の本のこと

アーキヴィストの見習いをさせていただいている研究所からの帰り道、駅を降りて歩いていると、もう少しで家というところにある中ぐらいの規模の古書店の店先の、いわゆるお得用の本棚に、ずっとさがしていた料理の本を思いがけず見つけ、しめしめと求めて帰路につきました。

この本は昭和35年に刊行されたもので、堅表紙の150ページほどの本です。

本に書かれているのは、西洋料理のだしの引きかたと、そのだしを用いたスープ料理の作り方、およびその供しかたです。

だしの引きかたは、まず最も用途の広い牛のだしと鶏のだし、魚のだしからはじまり、最もおいしいだしとされている亀のだしの引きかたに及びます。

亀のだしは鼈でとるのだそうですが、そもそも鼈はどこで求めればよいか、からはじまり、生きた鼈を調理のために解体する方法、解体のおりに気をつけるべきことがらまで、この本の著者は懇切に書いています。

鼈を解体するためには、まず鼈を空腹や水分不足などの怒りっぽい状態にしておき、大きなやっとこもしくは肉切り包丁を手近に置いた上で鼈を調理台に載せ、鼈の前で布ナフキンをひらひらさせると、鼈はそれに噛み付くので、そのまま布ナフキンを強く引いて鼈の首を最大限に伸ばし、そこで、手許に置いておいたやっとこもしくは肉切り包丁で勢いよく首を落とすとよい、と書かれてありました。

鼈は和食でいただいたことは何度かありますが、洋食でいただいたことはありません。そして、このような解体法によって調理されるということも知りませんでした。

昭和35年は、いわゆる「本格的」な西洋料理が一般化するすこし前の時代であったように思われます。簡便な半製品がなかったぶん、家庭向けの料理本であっても記述が本格的であるのが、この時代の料理本が読んで楽しく、かつたいへん役立つ理由であるように思われます。

本は読み始めたばかりですが、きょうはまた、ビシソワーズは必ず葱でこしらえるもので、玉葱ではいけないということも知りました。鼈は物騒ですが、ビシソワーズは平和的ですので、そのうちこしらえてみようと思います。

写真は、アメリカに出かけていたある日の夕食です。近くのスーパーで野菜を買い、いとこおすすめのブリトーを主菜にしたものです。ブリトーの中身にチラントロが入っていたために、母親が体調をくずしたのはこの日の夜のことでした。

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