10月23日 (火)  定本食道楽のこと

過日来、まうかめ堂さんとのあいだで話題になっていた上野動物園の謎の動物(仮称デッパリス)は、その後、東京じゅうの動物園および動物公園で飼育されている動物を検索できるデータベースを駆使して調査した結果、アメリカヤマアラシ科に属するカナダヤマアラシという飼育動物であることがわかりました。

上野動物園には、動物の習性にそった動物の飼育・展示のために、ヤマアラシがじぶんで樹に上ってくらせるよう、樹の下が寝る場所、樹の上が暮らす場所というカナダヤマアラシの展示施設があるようです。もし、カナダヤマアラシがなにか野心(もしくは郷愁心)を抱いても、樹の枝は刈り込まれていて、上った樹の枝伝いに逃走することはできないようになっているとのことでした。

なお、まうかめ堂さんからはその後、デッパリスの活用形をいろいろ教えていただきました(ラテン語は名詞も活用するのだそうです)。デッパリーやデッパレースやデッパリブスなど種々の活用形のうち、デッパリウムという響きがたいへん気に入りました。

きょうは、アーキビストの見習いの仕事から家に帰る途中の古本屋さんで、村井弦斎の「定本食道楽増補 註釈つき」の当時のものが売られているのを見つけ、うまうまと買って帰りました。この本はおそらく4冊で1揃のはずですが、3冊しかなかったので、いくぶん求めやすい価格になっていたのでしょう。

「定本食道楽」は、啓蒙小説もしくは恋愛小説の形をとりながら、西洋料理のこしらえ方や、西洋料理のための素材の選び方、西洋料理の滋養や効能、西洋料理の作法などがわかりやすく書かれている本です。求めてきた本は明治37年の9版ですが、初版は明治36年です。

初版からの体裁の変遷は調べたことがありませんが、この「増補 註釈つき」は、本の上から3センチほどが註釈欄になっており、小説中で紹介されている実用的な部分(調理法や調理の注意点など)が抜き書きされています。また、既出箇所には参照すべきページが書かれており、調理書としてたいへん実用的なものです。

現在のところ、お嬢さんは休息を必要としていながら、いろいろの理由でゆっくりできる時間をなかなか摂ることができません。せめてこの本を電車の中などでゆっくり読んで、ちいちいと憂いを忘れてみようと思います。

和綴じ本は存外丈夫ですが、ふしぎな本を読んでいる姿にびっくりされないよう、表紙にカバーなどかけて持ち歩こうと思います。

写真は、ボルチモアにあるオリオールズのホームグラウンド周辺 の試合前のにぎわいです。牛の扮装をしているのは、シャツから判断するに鶏肉消費推進委員会もしくは鶏肉生産業者のような団体で、その意味するところは、「ぼくがかわいいと思ったら、ぼくが食肉にされないよう、かわりにチキンを食べて下さい」ということなのだと思います。

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