Congaudeant Catholici: MIDI

ここでは Codex Calixtinus 『カリクスティヌス写本』の3声のコンドゥクトゥス、Congaudeant catholici 『共に喜べ、カトリック信者たちよ』を MIDI で紹介します。

『カリクスティヌス写本』とこの曲について解説を書いたら長くなったので別ページにまとめました。 下を御覧下さい。

さて、上の解説と一部重複しますが、この曲について手短に説明します。

Codex Calixtinus には20曲の多声の音楽が含まれています。これは「アキテーヌのポリフォニー」と並ぶ「初期ポリフォニー」の重要な例で、定旋律の一音に対して複数音の対旋律が対応する、「メリスマ様式」のポリフォニーです。 また、グレゴリオ聖歌と同じネウマによって楽譜が記されているため、音高は確定しますが、リズムは明確ではありません。

Congaudeant catholici は Codex Calixtinus に含まれる唯一の3声曲であると同時に、西洋音楽における3声の音楽の最初期の例であり、史上最古の3声のコンドゥクトゥスとしても知られる曲です。

3声曲として見たときに、時として大胆な不協和音が用いられ、「これが本当に3声の音楽の最初期の例なのか」と思ってしまうくらい深遠で神秘的な響きがします。 この響きが多くの人々を魅了しており、音楽学者たちは数多くの transcription を作り、演奏者たちは数多くの想像力豊かな演奏を残してきました。

それら数々のヴァージョンの "Congaudeant catholici" を比較検討する作業は非常に楽しいことです。 ここでは、それらのうちから6つのヴァージョンを MIDI 化しましたので紹介していきたいと思います。

※以下で、MIDI は一つの別窓で開くようにしてあります。一方 transcription は "_blank" で開くようになってます。ご注意下さい。 (こういうときちょっとだけ Javascript が使いたくなります。)
Ver.1: F.Ludwig
20世紀前半、この分野で最も偉かった音楽学者の一人である F.Ludwig による、最も流布している transcription によるものです。
Ver.2: D.Hughes
現代イングランドを代表する中世音楽の権威 Dom Anselm Hughes によるもの。 彼はここにノートルダム楽派で顕著となる3分割リズムの萌芽があったのではないかと提唱しています。 下2声は歩行に合わせて歌われるように一定のリズムをきざみ、その上に3分割リズムのメリスマが乗ります。 金澤正剛先生が「中世音楽の精神史」で言っておられるように、「行列歌」としての解釈としてはこれが最も説得力があるかもしれません。
Ver.3: Anonymous 4
Anonymous 4: Miracles of Sant'iago からのコピー。 Anonymous 4 は女声4人で中世音楽に果敢に挑戦していく団体ですが、その最大の特徴はわかりやすさではないかと思います。 必ずしもリズムの明確でない聖歌やオルガヌムでも、大胆なリズム解釈を行ない、この分野の音楽に馴染みのない聞き手にも無理なく聞かせてしまします。 またこの団体のディスクでは一般に、 CD 本体のデザインも美しく、わかりやすく大きな字で印刷され、きれいな図版入りの充実したブックレットも付いてきて、必ずしも低いといえない中世音楽の敷居を確実に下げくれています。 この "Congaudeant catholici" においてもとても思い切ったリズム解釈を行なっており、この時代にこのように歌われた可能性は低いにしても非常に魅力的な音楽になっています。
Ver.4: Studio der Frühen Musik
Thomas Binkley 率いる Studio der Frühen Musikの Camino de Santiago I というディスクからのコピー。 1973年録音と若干古い演奏ですが、2000年に REFLEXE シリーズの一枚として再発売されたものです。 "Congaudeant catholici" に関しては前半は、Ver.6: Theatre of Voices に似て三拍子系のリズムで進みますが、後半はかなり自由なリズムになります。
Ver.5: Discantus
Ensemble Gilles Binchois の一員であり、名カウンターテナーGérard Lesne のお姉さんでもある Brigitte Lesne が率いる女声のグループ Discantus の Campus Stellae というディスクからのコピーです。 かなり自由なルバートによる女声合唱がこの曲の神秘的なイメージをかきたてます。
Ver.6: Theatre of Voices
Paul Hillier 率いる Theatre of Voices の The Age of Cathedral というディスクからのコピーです。 この演奏は個人的に非常に好きなものです。 第一節から第五節までは下2声だけで明確な長短の三拍子のリズムで歌われます。 この長短のリズムは詞の韻律に顔を立てた結果で、この下2声だけでも十分おもしろいコンドゥクトゥスとなっています。 そこへ第六節からメリスマ声部が入ります。 CD の演奏ではそのときの拡がりが本当に美しいのですが、MIDI ではそのあたり十分伝わらないかもしれません。

Last modified: 2004/07/28