上の第一巻はすべてのことを分類して述べたものだが,以下ではそれらのことを詳細に提示しようと思う.
ピュタゴラスは「存在すること esse」と呼ばれるものを,哲学の主題の知識と学説と定めていた. 「存在する」とピュタゴラスがみなしていたのは,偶然によって変化しないもの. それは〈形相 forma〉,〈大きさ magnitudo〉,〈質 qualitas〉,〈状態 habitudo〉, また他の不変なものである.
ピュタゴラスによると〈量 quantitas〉は連続している〈大きさ magnitudo〉と,隔てられている〈多数 multitudo〉に分けられる. 〈多数 multitudo〉は有限の〈量 quantitas〉からはじまり無限に増大しえて果てはないが,減少については限界があり〈単位一 unitas〉が最小である. 一方〈大きさ magnitudo〉は有限の〈量 quantitas〉からはじまり無限に減少しうる. ある長さの線があったとすると,それを半分に分割することができる.さらにその半分を半分に分割でき,さらにそれを半分にと,〈大きさ magnitudo〉の分割には限界がない.
〈大きさ magnitudo〉の中のあるものは不動である.三角形や四角形や円がそうである. あるものは動くものである.宇宙の天空や回転するものがそれである.
隔てられている〈多数 multitudo〉の中のあるものはそれ自体で存在する. 2 や 3,その他の数がそれである. またあるものはあるものに対する形で存在する.二倍や三倍,対比から生じるものがそれである.
不動の〈大きさ magnitudo〉は幾何学が,動く〈大きさ magnitudo〉は天文学が,それ自体で存在する隔てられた〈量 quantitas〉は算術が,あるものに関係づけられた〈量 quantitas〉は音楽が考察する.
※〈量〉の二つの種類(連続しているか隔てられているか)をさらに二つに分け,クワドリヴィウムの4科目を対応させているのが興味深いです.
あるものに関連づけられた〈量〉について,3つの類 genus がある.〈多倍比〉〈単部分超過比〉〈複部分超過比〉の3つである. この3つから2つが組み合わされることによりさらに2つの類,〈多倍比+単部分超過比〉〈多倍比+複部分超過比〉ができる.
※〈多倍比〉は2倍とか3倍とか,現代の記号を使うなら $n$ を自然数として $n:1$ と表される比のことです.
〈単部分超過比〉は $3:2$ とか $4:3$ とか,$n+1:n$ で表される比のことです. つまり $n$ と $n$ を $1$ だけ超過した $n+1$ の比ということです. $3:2$ を〈2の単部分超過比〉, $4:3$ を〈3の単部分超過比〉,$n+1:n$ を〈$n$ の単部分超過比〉と呼びます.
一方 $\delta$ を2以上の自然数として $n+\delta:n$ で表されるような比が〈複部分超過比〉です. $5:3$, $7:4$, $9:5$ がそうです. 但し $6:4$ は〈複部分超過比〉に見えますが $6:4=3:2$ なので〈単部分超過比〉です. 正確には $n+\delta$ と $n$ が互いに素のとき $n+\delta:n$ で表されるような比が〈複部分超過比〉ということになります. $5:3$ は $5:3=(3+2):3$ なので〈2部分超過比〉と呼びます. 同様に $7:4=(4+3):4$ は〈3部分超過比〉, $9:5=(5+4):5$ は〈4部分超過比〉です.
〈単位一〉に2以上の数を対比させれば〈多倍比〉が得られる
1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
(2以上の)自然数を,そこから〈単位一〉が差し引かれた自然数と対比すると〈単部分超過比〉が得られる.
〈2の単部分超過比〉 | 〈4の単部分超過比〉 | 〈6の単部分超過比〉 | |||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
〈3の単部分超過比〉 | 〈5の単部分超過比〉 |
〈複部分超過比〉は,まず3から始まる自然数の並びを配置し,一つの間を空けるなら〈2部分超過比〉,二つの間を空けるなら〈3部分超過比〉,4つの間を空けるなら〈4部分超過比〉が得られる.
┏ | 〈2部分超過比〉 | ┓┏ | 〈4部分超過比〉 | ┓ | ||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
┗ | 〈3部分超過比〉 | ┛ |
〈多倍比〉は他の二つよりはるかに尊重すべきものと見られている. なぜなら自然数の配置は,対比される第一のものである〈単位一〉の倍化によるものだから. 〈単部分超過比〉は,〈単位一〉との対比によって成されるのはなく,〈単位一〉のあとに残されるものとの対比による. 〈複部分超過比〉の形成はさらに後退している.
次は自然数とその平方(自乗)を並べた表である.
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
4 | 9 | 16 | 25 | 36 | 49 | 64 | 81 | 100 |
下段の平方は上段の数を辺の長さとする正方形の面積である. 下段に対する上段の数を下段の平方の辺とよぶことにする.
続いている(隣り合う)平方の小さい方を大きい方から差し引くと,両方の平方の辺の和が生じる.
\[ 3^2-2^2=9-4=5=3+2 \] \[ 4^2-3^2=16-9=7=4+3 \]これは次のように一般的に証明されます. \[ (n+1)^2-n^2 = \{(n+1)-n\}\{(n+1)+n\}=(n+1)+n \]
一つ飛ばしの平方について小さい方を大きい方から引くとき,その差の半分は両方の平方の辺の和である.
\[ 4^2-2^2 = 16-4 =12, \quad 12/2 = 6 = 4+2 \] \[ 5^2-3^2=25-9=16,\quad 16/2=8=5+3 \]これは次のように一般的に証明されます. \[ (n+2)^2-n^2 =\{(n+2)-n\}\{(n+2)+n\}= 2\{(n+2)+n\} \] さらに辺の差が $k$ のときに一般化すると \[ (n+k)^2-n^2 =\{(n+k)-n\}\{(n+k)+n\}= k\{(n+k)+n\} \]
〈単位一〉が複数性の起源であるように,均等性が諸比の起源である.
自然数の列 $a_1$, $a_2$, $a_3$ に対し, \begin{align} b_1&=a_1\\ b_2&=a_1+a_2\\ b_3&=a_1+2a_2+a_3 \end{align} によって定義される列 $b_1$, $b_2$, $b_3$ を考える.
$a_1=a_2=a_3=1$ のとき \begin{align} b_1&=a_1=1\\ b_2&=a_1+a_2=1+1=2\\ b_3&=a_1+2a_2+a_3=1+2\times1+1=4 \end{align} となり,〈二倍比〉の列が得られる. つまり均等性から〈二倍比〉が生じる.
1 | 1 | 1 |
1 | 2 | 4 |
※つまり $1$, $2$, $4$ において,隣り合う二つずつをとった $1:2$ と $2:4$ はどちらも〈二倍比〉です.
〈二倍比〉の列 $a_1=1$, $a_2=2$, $a_3=4$ から出発すると, $b_1=1$, $b_2=1+2=3$, $b_3=1+2\times 2 +4=9$ となり,〈三倍比〉の列が得られる.
1 | 2 | 4 |
1 | 3 | 9 |
〈$n$ 倍比〉の列 $a_1=1$, $a_2=n$, $a_3=n^2$ から出発すると, \begin{align} b_1&=a_1=1\\ b_2&=a_1+a_2=n+1\\ b_3&=a_1+2a_2+a_3=1+2n+n^2=(n+1)^2 \end{align} となり,〈$(n+1)$ 倍比〉の列がえられる.つまり〈$n$ 倍比〉から〈$(n+1)$ 倍比〉が生じる.
$1$ | $n$ | $n^2$ |
$1$ | $n+1$ | $(n+1)^2$ |
上の〈二倍比〉の列 $1,2,4$ を逆に並べた $a_1=4$, $a_2=2$, $a_3=1$ から出発すると $b_1=4$, $b_2=4+2=6$, $b_3=4+2\times 2+1=9$ となり〈$2$ の単部分超過比〉(=2:3)の列が得られる.
4 | 2 | 1 |
4 | 6 | 9 |
上の〈三倍比〉の列 $1,3,9$ を逆に並べた $a_1=9$, $a_2=3$, $a_3=1$ から出発すると $b_1=9$, $b_2=9+3=12$, $b_3=9+2\times3+1=16$ となり〈$3$ の単部分超過比〉(=3:4)の列が得られる.
9 | 3 | 1 |
9 | 12 | 16 |
〈$n$倍比〉を逆に並べた $a_1=n^2$, $a_2=n$, $a_3=1$ から出発すると \begin{align} b_1&=n^2\\ b_2&=n^2+n=n(n+1)\\ b_3&=n^2+2n+1=(n+1)^2 \end{align} となり,〈$n$ の単部分超過比〉($n:n+1$)の列が得られる.
$n^2$ | $n$ | 1 |
$n^2$ | $n(n+1)$ | $(n+1)^2$ |
上の〈$2$ の単部分超過比〉の列 $4,6,9$ を逆に並べた $a_1=9$, $a_2=6$, $a_3=4$ から出発すると $b_1=9$, $b_2=9+6=15$, $b_3=9+2\times 6 +4=25$ となり〈$3$ の二部分超過比〉(=3:5)の列が得られる.
9 | 6 | 4 |
9 | 15 | 25 |
$n$ の〈単部分超過比〉を逆に並べた $a_1=(n+1)^2$, $a_2=n(n+1)$, $a_3=n^2$ から出発すると \begin{align} b_1&=(n+1)^2\\ b_2&=(n+1)^2+n(n+1)=(n+1)\{(n+1)+n\}\\ b_3&=(n+1)^2+2n(n+1)+n^2=\{(n+1)+n\}^2 \end{align} となり,$n+1$ の〈$n$ 部分超過比〉の列が得られる.
$(n+1)^2$ | $n(n+1)$ | $n^2$ |
$(n+1)^2$ | $(n+1)\{(n+1)+n\}$ | $\{(n+1)+n\}^2$ |
上の〈$2$ の単部分超過比〉の列 $4,6,9$ をそのままの順に並べた $a_1=4$, $a_2=6$, $a_3=9$ から出発すると $b_1=4$, $b_2=4+6=10$, $b_3=4+2\times 6 +9=25$ となり 〈二倍比〉+〈$4$ の単部分超過比〉(=2:5)の列が得られる.
4 | 6 | 9 |
4 | 10 | 25 |
〈$n$ の単部分超過比〉を順に並べた $a_1=n^2$, $a_2=n(n+1)$, $a_3=(n+1)^2$ から出発すると \begin{align} b_1&=n^2\\ b_2&=n^2+n(n+1)=n(2n+1)\\ b_3&=(n+1)^2+2n(n+1)+n^2=(2n+1)^2 \end{align} となり,<二倍比>+〈$2n$ の単部分超過比〉の列が得られる.
$n^2$ | $n(n+1)$ | $(n+1)^2$ |
$n^2$ | $n(2n+1)$ | $(2n+1)^2$ |
上のように〈単部分超過比〉から生じた〈複部分超過比〉の列からは〈多倍比〉+〈単部分超過比〉の列が生じる.
例えば,上の〈$3$ の二部分超過比〉の列 $a_1=9$, $a_2=15$, $a_3=25$ から出発すると $b_1=9$, $b_2=9+15=24$, $b_3=9+2\times 15 +25=64$ となり 〈二倍比〉+〈$3$ の単部分超過比〉(=3:8)の列が得られる.
9 | 15 | 25 |
9 | 24 | 64 |
$2,3$ や $4,6,9$ や $8,12,18,27$ のように,同じ〈単部分超過比〉の連続した列を得たいとする. 任意の長さのこのような列を以下の規則により〈多倍比〉から導き出すことができる.
始めに〈単位一〉を置き,2倍を繰り返して $1,2,4,8,16$ という〈二倍比〉の列を作り一行目に書く.
同じ〈単位一〉から始めて,3倍を繰り返して $1,3,9,27,81$ という〈三倍比〉の列を作り右下に向かって対角に並べる.
1 | 2 | 4 | 8 | 16 |
3 | ||||
9 | ||||
27 | ||||
81 |
次に二行目の $3$ から始めて,2倍を繰り返して $3,6,12,24$ という〈二倍比〉の列を作り二行目に書く.
次に三行目の $9$ から始めて,2倍を繰り返して $9,18,36$ という〈二倍比〉の列を作り三行目に書く. 以下同様に繰り返す.
1 | 2 | 4 | 8 | 16 |
3 | 6 | 12 | 24 | |
9 | 18 | 36 | ||
27 | 54 | |||
81 |
こうしてできた三角形状の数の配置について,縦に数列を取り出すと $(2,3)$, $(4,6,9)$, $(8,12,18,27)$ というように,任意の長さの〈$2$の単部分超過比〉の列が得られる.
〈三倍比〉と〈四倍比〉から出発すると〈$3$ の単部分超過比〉の列が得られる.
1 | 3 | 9 | 27 | 81 |
4 | 12 | 36 | 108 | |
16 | 48 | 144 | ||
64 | 192 | |||
256 |
〈四倍比〉と〈五倍比〉から出発すると〈$4$ の単部分超過比〉の列が得られる.
1 | 4 | 16 | 64 | 256 |
5 | 20 | 80 | 320 | |
25 | 100 | 400 | ||
125 | 500 | |||
625 |
以上を一般化するなら, 〈$a$ 倍比〉と〈$b$ 倍比〉により同様の構成を行うと,隣り合う数の比が $a:b$ であるような列が得られる. 特に $b=a+1$ のとき,〈$a$ の単部分超過比〉の列が得られる.
1 | $a$ | $a^2$ | $a^3$ | $a^4$ |
$b$ | $ab$ | $a^2b$ | $a^3b$ | |
$b^2$ | $ab^2$ | $a^2b^2$ | ||
$b^3$ | $ab^3$ | |||
$b^4$ |
※このような列を得るには,次を考えれば一発です. \begin{matrix} a^n& a^{n-1}b& a^{n-2}b^2&\cdots & a^{n-k}b^k&\cdots&ab^{n-1} & b^n \end{matrix}
より対称な構成の仕方として,まず最も単純な $2$ の〈単部分超過比〉 $(2,3)$ を置く. $2$ の左下に $2$ の二倍の $4$ を置き, $3$ の左下に $3$ の二倍の $6$ を置き, $3$ の右下に $3$ の三倍の $9$ を置くと,$2$ の〈単部分超過比〉の列 $(4,6,9)$ が得られる. ($2$ の左下は $2$ の三倍の $6$ であることにも注目.)
2 | 3 | |||
4 | 6 | 9 |
右下方向には $2$ 倍を続け,左下方向には $3$ 倍を続けると,任意の長さの $2$ の〈単部分超過比〉 の列が得られる.
2 | 3 | ||||||
4 | 6 | 9 | |||||
8 | 12 | 18 | 27 |
この構成を一般的に行うと次の図のようになります.赤の矢印は $a$ 倍を表し,青の矢印は $b$ 倍を表します.
比の大小について
ここから比の大小についての議論がたびたびなされます. 比の大小の定義そのものは「音楽教程」の本文には見当たらないので,ひとまずユークリッドの原論の定義を引用することにします.
ユークリッド原論 第5巻 定義 DV 7 [Reference]
比 $a:b$ が比 $c:d$ より大きいとは,不等式 $ma>nb$, $mc\leqq nd$ を満たす自然数 $m$, $n$ が存在すること.
例 $3:2$ は $4:3$ より大きい.なぜなら,$a:b=3:2$, $c:d=4:3$ と置き,$m=3$, $n=4$ とすると,$ma=9>8=nb$, $mc=12=nd$.
ユークリッドの定義は現代人にはわかりにくいと思うので,分数(比の値)の言葉に言い換えておきます.
命題1 $a:b$ が $c:d$ より大きい $\Leftrightarrow$ $\displaystyle\frac{a}{b}>\frac{c}{d}$
証明 $a:b$ が $c:d$ より大きいとき,定義より $ma>nb$, $mc\leqq nd$ を満たす自然数 $m$, $n$ が存在するので $\displaystyle \frac{a}b>\frac{n}m\geqq\frac{c}d$.
次に $\displaystyle\frac{a}{b}>\frac{c}{d}$ が成り立つとき,$m=d$, $n=c$ としてこの不等式の両辺に $\displaystyle\frac{m}{n}$ をかけると \[ \frac{ma}{nb}>\frac{mc}{nd}=1 \] したがって $ma>nb$, $mc=nd$ が成り立つので $a:b$ は $c:d$ より大きい.QED.
重要な注意! 以後,比の大小を問題にするとき,二つの数の比は原則として大きい方の数を前に置くこととします. つまり $a>b$ のとき $a$ と $b$ の比は $a:b$ とします. $2$ と $3$ の比は $2:3$ でなく $3:2$ とするということです.
なぜこのような注意をするかというと,二つの比の大小を考えるとき,それぞれの比でどちらの数を前に置くかで比の大小が変わってしまうからです. 例えば,$3:2$ は $4:3$ より大きいですが,$2:3$ は $3:4$ より小さくなります. ボエティウスの議論では「音程が大きいほうが比が大きい」となっているので,これと整合的なのは「大きい方の数を前に置く」というルールです.
なので,〈$2$ の単部分超過比〉は $3:2$, 〈$3$ の単部分超過比〉は $4:3$, 〈$n$ の単部分超過比〉は $(n+1):n$ とみなすことになります.
但し,比の大小を問題にする場合以外では様々な理由からこのルールが守られない場合もあります. 時と場合に応じて例えば〈$2$ の単部分超過比〉を $2:3$ で表すことが結構あります.
50 と 55 は 〈10 の単部分超過比〉を成す. 50 と 55 の差 5 は 50 を 10 回測り(割り),55 を 11 回測る.
53 と 58 を考える. これらの差 5 は 53 を 10 回測り 3 が余る. 55 を 11 回測り 3 が余る.
53 | 58 |
50 | 55 |
このとき $55:50$ は $58:53$ より大きい.(なぜなら $\displaystyle \frac{55}{50}>\frac{58}{53}$ だから)
一般に次が成り立ちます.
命題2 $a>b$, $c>0$ のとき,$a:b$ は $(a+c):(b+c)$ より大きい
証明 $d=a-b$ とすると $a=b+d$. \[ \frac{a}b = \frac{b+d}{b}=1+\frac{d}b,\quad \frac{a+c}{b+c} = \frac{b+d+c}{b+c}=1+\frac{d}{b+c}. \] $b< b+c$ より $\displaystyle\frac{d}b>\frac{d}{b+c}$ なので $\displaystyle \frac{a}b>\frac{a+c}{b+c}$. 命題1より $a:b$ は $(a+c):(b+c)$ より大きい. QED.
48 と 53 を考える. これらの差 5 は 50 を 10 回測り,その 50 は 48 を 2 超えている. 5 は 55 を 11 回測り,55 は 53 を 2 超えている.
48 | 53 |
50 | 55 |
このとき $55:50$ は $53:48$ より小さい.
$1/2$ は $1/3$ より大きく, $1/3$ は $1/4$ より大きく, $1/4$ は $1/5$ より大きく,以下同様に進む. このことから 〈$2$ の単部分超過比($3:2$)〉は 〈$3$ の単部分超過比($4:3$)〉より大きく, 〈$3$ の単部分超過比($4:3$)〉は 〈$4$ の単部分超過比($5:4$)〉より大きい. 一般に $n$ が小さいほど〈$n$ の単部分超過比($n+1:n$)〉は大きい.
※前半の $1/2>1/3>1/4$ ということと,後半の〈単部分超過比〉の大小の話がどうつながるのかというと,次のようです. \[ \frac32=1+\frac12>\frac43=1+\frac13>\frac54=1+\frac14 \] なので〈$2$ の単部分超過比($3:2$)〉は 〈$3$ の単部分超過比($4:3$)〉より大きく, 〈$3$ の単部分超過比($4:3$)〉は 〈$4$ の単部分超過比($5:4$)〉より大きい.
〈多倍比〉を自乗すると再び〈多倍比〉が得られる. 例えば〈二倍比〉 $2:1$ を自乗すると $2^2:1^2=4:1$ となり,〈四倍比〉が得られる.
一方〈単部分超過比〉を自乗したものは〈多倍比〉でも〈単部分超過比〉でもない. 例えば〈$2$ の単部分超過比〉 $3:2$ を自乗すると $3^2:2^2=9:4$ となる.
〈$2$ の単部分超過比〉と〈$3$ の単部分超過比〉が組み合わされると〈二倍比〉が得られる. (つまり $2:3$ と $3:4$ をつなげると $2:4$.)
2,4,6 という数の並びを考える.$2:4$ は〈二倍比〉で,$4:6$ は〈$2$ の単部分超過比〉,$2:6$ は〈三倍比〉である.つまり〈二倍比〉と〈$2$ の単部分超過比〉を組み合わせると〈三倍比〉となる.
同様に〈三倍比〉と〈$3$ の単部分超過比〉を組み合わせると〈四倍比〉となる.$1:3:4$.
一般に〈$n$ 倍比〉と〈$n$ の単部分超過比〉を組み合わせると〈$n+1$ 倍比〉となる.$1:n:n+1$.