Re:Amours me fait desirer まうかめ堂 【2004/11/19 16:03:22】 興味深い情報ありがとうございます。
> ある14世紀後半の作曲家を列挙するような曲の中で
これはとても興味をひかれますね。もしより具体的なことがわかりましたら是非教えてください。
後で La Trobe University の Medieval Music Databaseを見てみたら、題名が "Amor me fait desirer layaument" となってました。
で、そこで挙げられているこの曲を取り上げてる文献に
1. NEWES, Virginia E. 'Imitation in the Ars nova and Ars subtilior', Revue belge de musicologie, XXXI (1977): 38-59.
2. NEWES, Virginia E. 'The relationship of text to imitative technique in 14th century polyphony', Musik und Text in der Mehrstimmigkeit des 14. und 15. Jahrhunderts, edited by U. Gunther and L. Finscher, Kassel: Baerenreiter, 1984, pp. 121-154.
というのがあるそうなので、実はこの辺を見れば良かったのかもしれません。(でも、私の場合どこに見に行けばよいかという問題はあります。)
ただこのタイトルにある imitation は「模倣」のことでしょうね。つまりこの曲の冒頭の3声間の模倣について書いてあるのではないかと思います。まあ、実際に見ないことには何を言っても始まりませんが…。
14世紀の世俗歌曲においては(平安時代の和歌と同じで)他人の詞、そして曲をパクることはかなり一般的だったみたいですね。ちょっと前に次のような論文を見つけました。(しかし、この論文どうして download できたんだろう?)
3. PLUMLEY, Yolanda. 'Intertextuality in the Fourteenth-Century Chanson', Music & Letters, Vol.84 No. 3, August 2003: pp. 355-377
Abstract によると、"The practice of citation and allusion in both text and music was well established in the thirteenth century." とのことです。
実はまだまじめに読んでないのですが、例えば Matteo da Perugia がマショーのシャンソンを本歌取りしてるさまが譜例付きで論じてあります。
(このケースでは詞も旋律も引っぱってきてますね。)
面白いと思うのは、この論文で引用されてる Leonard Johnson という人の主張で、14、15世紀の詩人は the game of poetry の 'player' として特徴づけられる、というものです。
どうも「本歌取り大会」のようなものがしばしば行われてたみたいです。有名らしいのが1469年の 'Concour de Blois' というものだそうで、一つの詩のリフレインをもとに Villon や Charles d'Orleans を含む複数の詩人が11の詩を作ったそうです。これは15世紀ですが14世紀にもこの種の competition が行われていたとのことです。
しかし、歌曲というのは音楽だけ見ててもせいぜい半分しか見たことにならないわけで、残りの半分を見るために私も古仏語を勉強しなければなりませんね…。
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