Diary 2007. 9
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9月26日 (水)  ぶどう汁のこと

秋分の日の前日、お嬢さんが街の音楽会から帰ってくると、夜分に電話がかかってきました。電話の主は祖母で、本日農家の葡萄などを送ったので、あす届くであろうということです。

秋分の日の昼前、宅急便の方に起こしていただくようにして荷物を受け取ると、荷物はトマトなどが入っている平たい段ボール箱をふたつ重ねた姿をしていました。葡萄など、ということは、ひとつが葡萄、もうひとつが野菜であろうとふんで箱を開けると、ひとつの箱には濃紺色の葡萄、もうひとつの箱には淡緑色の葡萄と数個の梨が入っていました。

淡緑色の葡萄はロザリオビアンコという品種で日持ちがしますが、濃紺色の葡萄はベリーAという品種でした。ベリーAは昔からある葡萄の品種で、皮と身のあいだに甘みの濃い層があり、皮をこそげるようにぬるりといただくとたいへんおいしいものですが、あまり日持ちがしません。よく熟したものは房から実粒がとれてしまうので、店先で見かけることも少ないようです。

膨大な葡萄を前に、お嬢さんは少し途方に暮れたあと、フライパンを取り出し、猛然とぶどう汁作りにとりかかりました。作り方は以下の通りです。

1、葡萄を洗い、房から実を外し、水を張ったボウルに入れて細かい汚れをとり、いたんだ実を取り除きます。

2、フライパン(あれば琺瑯製の平鍋がよいです)に葡萄の粒を水気のついたまま入れ、火にかけます。葡萄の粒に付いた水滴のほか、水は加えません。また、甘味も特に加えません。

3、しばらく火にかけていると、ちょうどトマトピューレをこしらえる時のように、葡萄の粒が熱によってはじけ、果汁がしみてくるようになります。

4、葡萄の粒のほとんどがはじけ、全体がぐつぐつしてきたら火を止め、フライパンの中身をざるをおいたボウルにあけ、果汁がボウルに滴るのを待ちます。これには少し時間がかかります。

5、ボウルで受けた果汁は、清潔な容器に移して冷蔵保存します。濃い果汁がとれますので、いただく時には水や炭酸水で割っていただきます。

6、ざるに残った果肉と皮を裏ごしにかけると、果肉のピューレと皮・種子とに分けることができます。ピューレに甘味を加えて煮詰めるとジャム状のものになり、これはヨーグルトによく合います。皮と種子は捨てます。

この日の奮闘で、お嬢さんは小さなペットボトル4本の果汁と、大きなジャム瓶ふたつ分の濃縮果肉を得ることができました。火を通してあっても果汁は醗酵してくるらしく、こちらは急いでいただこうと思います。

写真は、猫の山里の街の駅にやってきた蒸気機関車です。

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9月7日 (金)  台風の目のこと

昨日は、アーキヴィストの見習いの仕事のあと、街の音楽ホールに出かけてジャズピアノの演奏会を聴きました。ジャズピアノを直接聴くのは2回目で、ピアノソロの演奏会を聴くのは初めてです。

ふだんはクラシックの演奏会が開催されることが多い音楽ホールにたくさんの照明器具が並べられ、曲が終わるごとにひょういひょういと独特の賛辞の声が発せられる中で音楽を聴くことは、なんとなく不思議な体験のように思われました。お嬢さんが思うところ、ジャズの演奏会は、おいしい食事やアルコールを楽しみながら、ゆるゆると聴くほうがよいように思われます。

音楽会の帰りは、台風の接近による風雨に重なりました。ずぶぬれのお嬢さんは部屋に帰ると上から下まで着替えをし、それからタオルを持って、廊下に残った水のしずくを拭きに出たほどです。

きょうは台風の余波を勘案して家におりました。

ラジオを聴くと、東京を通過した台風はお嬢さんの郷里に一直線に向かっているようです。祖母を案じて電話をかけると祖母が出て、こちらは風雨は強いが、台風の目はまだ見えていないので、まだこれからなのだろうという答えが返ってきました。

「台風の目というものは、地上から見えるものでしょうか」

お嬢さんがたずねると、祖母は、
「ずっと以前、まだ家族が猫の山里の街に住んでいたころ、いっしょに見た記憶があるのを忘れたか。朝が来たら山羊の小屋がむこうの畑に飛んでいて、桐林の桐がごろごろと倒れていた、あの台風の時、たしかに雲の渦と、渦の中の蒼い目が見えたはずだ」

言われると、たしかにそうであったように思われました。あれは、お嬢さんが小学生になったばかりで、小学校の演劇鑑賞会のために入院先から外泊した日のことであったと思います。さきほどまでの風雨がきゅうに止み、外が明るくなったので、ふたりで外に出たときのことです。

きのうからきょうにかけての台風は、東京の夜を越えて過ぎていったので、目を見る機会はありませんでした。しかし、台風のあとの夕焼けはたいへん鮮やかでした。

写真は、お嬢さんの郷里のはずれにある川の合流点です。

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9月5日 (水)  夏野菜のこと

きょうは、アーキヴィストの見習いの仕事をお休みして、年に何回か受けることになっている検査を受診するために大きな病院に出かけることになっていました。

予約の時間に間に合うよう起き、ばたばたと支度をしていると、歯みがきの途中でちょうど手が離せない状態のとき、電話がなりました。

この時間に電話をかけてくるのは家族以外にありません。寝巻に歯みがきを垂らしながら電話に出ると祖母からで、昨日野菜を送ったので、おそらく今日届くであろうことを昨日電話し忘れたので、いま電話したしだいである、ということでした。これから病院に出かけますので、戻ってきたらきっと届いているでしょうと答えて支度を続けました。

病院にでかけてみると、予定されていた検査はお嬢さんの体調のつごうにより繰り延べになりました。身支度を入念に整えたところで拍子抜けしてしまい、投薬だけしていただいてはやばやと帰宅しました。

途中、花屋さんの前を通りかかると、なにか不思議なよい香りがしています。立ち止まると、この季節にしか入ってこないジンジャーリリーが並んでおりましたので、さっそく買って活けてみました。ジンジャーリリーはみょうがの花(みょうが茸には、放っておくと白い儚げな花が咲きます)を大きくしたような白い花で、湿気のあるような甘い香りがします。

帰宅すると、階下の大家さんに大きな荷物がふたつ届いていました。ひとつは祖母からで、もうひとつは、20日ほど前に注文をして、音沙汰がなく心配していたハミウリ亜種です。

祖母からの荷物には、とうもろこし、トマト、きうり、もも、きゃべつ、葱、茸などがみっしり詰まっておりました。これでとうぶん生鮮野菜には困りません。特にトマトはよく熟れておりましたので、きうりといっしょに、過日教えていただいた冷製スープに仕立てようと思います。

ハミウリ亜種は、ハミウリと地場瓜のさまざまな交配種です。何年か前にいただいてたいへん気に入ったので、今年も注文をしていたのでした。

ふたつの荷物が一度にやってくることを想定していなかったので、現在のところ、お嬢さんの部屋は足の踏み場もない有様です。せっせといただき、滋養と居住空間を確保してゆこうと思います。

写真は郷里の猫です。たいへん鋭い爪が写っています。

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9月3日 (月)  クラブハウスサンドのこと

お嬢さんが、アーキヴィストの見習いの仕事から散歩をして帰る道の途中に、土曜日から大きなホテルが開業しました。

工事の経過をのんびり観察してきたので、土曜日の帰宅とちゅうの散歩のおり、意を決してホテルに立ち寄ってみると、思ったほどの混雑はありませんでした。

ますます意を強くして、係の方に軽いお茶と軽いごはんができる席があいているかどうかたずねてみると、テーブルをひとつあけてくださいました。そこで、その日は夕食がわりの軽食をここでいただくことにしました。

軽いごはんになりそうなメニューには、ハンバーガーと、鶏肉のピタサンドと、クラブハウスサンドがあり、お嬢さんはクラブハウスを選び、野菜のつめたいスープと紅茶をいっしょに注文しました。添えもののポテトフライが存外たくさんついたクラブハウスサンドはたいへん分量があり、お嬢さんはひとりで来たことをたいそう後悔しました。

このホテルは外国からやってきたホテルで、テーブルには時々係の方が廻ってきて、なにか話をして下さいます。お嬢さんのテーブルの係の方は英語を主として話す方であったので、お嬢さんもなんとかして英語を話しました。

開業日であったためか、その日はコックさんもテーブルを廻っておられました。クラブハウスサンドについていたカレー味のピクルスがたいへんよい味であったので、作り方を教えて下さいとお願いしたところ、これはわたしの秘密ですから、とのことでした。そのかわり、冷たい野菜のスープの味付けを少し教えていただきました。これは、ぜひまた出かけてみようと思います。

写真は、猫の山里の通りです。猫の山里は、かつて宿場であったため、町中の一本の道にそって住居がならぶ特有の造りが残されています。

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