Diary 2007. 10
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10月31日 (水)  続・父の荷のこと

すこし前の日記では、父が農村の直売所で求めたいろいろな品物を送って下さったことを書きました。見習いの身の長いお嬢さんにとって、こういった贈り物はたいそう助けになります。

お嬢さんの家では、祖母と母もときおりたべものを送って下さいますが、父の荷とのちがいは、祖母と母の荷はいわゆる「オールインクルーシブ」であるということです。たとえば、ねぎとごぼうとにんじんとだいこんとさといもとこんにゃくと味噌が入っていると、それは豚汁もしくは芋汁をこしらえなさいというサインであり、郷土食である中華そばの生麺には、炒肉とめんまときゃべつとねぎとセットになって届くといったぐあいです。

せんだって、父が送って下さった荷は、ヤーコンという謎の芋野菜がたっぷりと、紅芯大根の小振りなものが数個、さまざまな色と形の馬鈴薯がたっぷりと、玉蒟蒻の大袋が1つ、刺身蒟蒻がつごうで1キロほど、あとは汁の漏れたいちぢくの蜜煮でした。お嬢さんの郷里の県には蒟蒻の名産地がありますので、父はこの地域に用があって出かけたものと見えます。

「重い荷を荷造りしていただきありがとうございました。ところで、この荷物に動物質のものは入っていないのでしょうか、あと、これだけ汁の漏れるものが「書類」という名目になっているのは不思議ですねえと小包便の方がおっしゃっていました」と、荷物安着の知らせを電話で父にすると、父からは、秋なので蒟蒻を食べて精々減量に励むようにとの返事がありました。

しかし、うっかり辛子酢味噌を切らしていたために、お嬢さんが刺身蒟蒻にありついたのは到着の2日後になってしまいました。

昨日は、前回の荷に入りきれなかったぶんとして、ラフランス種の洋梨の大きなものが20個、玉蒟蒻の大袋が2つ、洋風蒟蒻麺が3袋、赤と黄色と黒褐色のパプリカがたくさん、慶弔の引出物と思われるだしセットが1セット届きました。

前回の荷とあわせて、これらの材料からどのような料理をこしらえればよいか、お嬢さんはうれしくも途方に暮れているところです。

写真は、お嬢さんの郷里の家の近くにある史跡です。自転車で10分ほど走るとこの場所に着きます。また、この史跡を抜ける道は、お嬢さんの高校時代の通学路でもありました。

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10月28日 (日)  映画見学のこと

きのうは、アーキビストの仕事を午後からにして、お昼近くに、東京国際映画祭の招待映画を見にでかけました。

この映画は日本映画ですが、製作にあたり、ごく少しだけお嬢さんがお手伝いをしました。本公開に先立ち、招待作品としてプレミア上映がおこなわれるというので、先に見ておこうと出かけたものです。

映画は、ふだんは音楽ホールとして使われているホールに大きなスクリーンをかけて上映されました。この映画では音楽が大きな効果をもたらしますが、映画館での上映より音がよいように思われました。チェロとピアノによる背景音楽は加古隆によるものです。

映画は、英語と日本語の台詞がほぼ半々ほどで構成されており、それぞれの言語の字幕が表示されます。これは、海外での上映を念頭においたものでしょうか。英語には法律用語のテクニカルタームが多く、字幕とあわせて見るとよい勉強になりました。

世界初上映ということで、上映のあとには出演者と作成者による舞台挨拶が行われましたが、お嬢さんはすこし急いでいたので中座しました。台風のなかを作業室に急ぎ、すこし作業をしたあと、風雨がひどくなってきたので皆を帰し、お嬢さんも帰りました。

きょうは台風一過のよい天気です。よく眠ってから、一大作業である衣類のとりかえをして今に至っています。だんだん寒くなりました。

写真は、アポロ宇宙船の内部です。外壁の痛みぐあいと操縦席の拘束帯が、なにかおそろしいような感じです。

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10月26日 (金)  米国野球のこと

お嬢さんはスポーツがたいそう苦手です。水につかることがいくぶん好きですが、共同作業や競争をともなうスポーツにはまったく関心がありません。

そのようなわけで、お嬢さんはスポーツ番組にもあまり関心がありません。ちいさなころは、定時のプログラムを圧して放映される野球や相撲番組はお嬢さんの仇敵でした。

いとこ夫婦がアメリカに住んでいるので、お嬢さん一家は2度アメリカにでかけましたが、そのたびに、いとこ夫婦が野球観戦を滞在プログラムに組み入れて下さいました。考えるに、野球観戦は入場料と適度な飲食料を支払うだけで、たいそうおもしろい体験ができるよい場所であるからなのでしょう。

日本野球と米国野球の観戦のしかたの大きな違いは2つあるように思われます。

ひとつは、米国野球には応援団や、応援団ごとの席の区分がありません。アメリカはたいそう広いので、応援する球団を追って移動するのが大変なのだと思われます。

そのため、野球場にいるのは圧倒的なホームのファンと、ごくすこしのアウェイのファン、あとは、どちらのファンというわけではないが野球を観戦したいファンです。

いとこ一家といとこの夫一族は熱心なレッドソックスファンです。カムデンヤードでオリオールズとの試合を観戦したおりには、周囲のブーイングや野次のなか、一族はそろってレッドソックスを応援し続けました。といっても、近隣とのあいだで殺伐とした空気が流れることはなく、なんといいますか、大声を出し合うこどものけんかのようなものです。

もうひとつは、試合の前に必ず起立して国歌斉唱が行われることです。国歌はかならず生演奏され、独唱のこともあれば合唱のこともあります。あちこちの球場から声のかかる、「野球場国歌歌手」のような人もいるのですよ、といとこが教えてくれました。

テレビでながめる野球の試合は、アナウンサーが親切に実況をしてくださいますので、全体像や試合配分が把握しやすくなっていますが、野球場でまんじりとすわっている限り、おお、と思うプレイはあまり多くありません。なんといいますか、のんびりとした間合いを、大画面に映し出されるゲームを見たり(シカゴの球場には大画面もなかったようなおぼえがあります)、体操をしたり、客席を出て売店でレモネードを飲んだりして過ごすのが、米国野球なのだろうとお嬢さんは勝手に思っています。

きょうは出来事の記事ではなく、なにか思うことを書いたような記事になってしまいました。本当は、季節に因んで、有毒茸による中毒および茸狩りの注意などを書こうと思っていたのですが、これはそのうち書くことにいたします。

写真は、リグリーフィールドの点灯試合の様子です。

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10月24日 (水)  父の荷のこと

昨日の日記に掲載した、「もっと鶏肉を!」というシャツを着た牛(の扮装をした人)を主催しているのは、業界団体や啓蒙団体ではなく、チキンフィルAという鶏肉料理チェーン店であることがわかりました。

チキンフィルAは鳥の胸肉のフライをはさんだチキンフィレバーガーを主力商品としており、ビーフパテのハンバーガーではなく、よりヘルシーなチキンフィレバーガーを選びましょうということのようです。

遠い記憶を呼び起こすと、お嬢さんはインディアナポリス市郊外のアウトレットモールの中にあるフードコート(室内にある屋台の寄り合いのような場所)で、家族とともにフィレサンドを食べていたような気がします。いろいろな屋台料理店が並んでいる中で、ここのフィレサンドはおいしいですよ、と、いとこの夫が運んできて下さったのでした。

昨日は、夜更けに電話がなりました。家族からの電話は、出勤前やいわゆる「夕食後」あたりの時間帯が多く、夜更けに電話をかけてくるのは気のおけない友人知人しかおりません。

いそいそとかわいらしく電話に出ると父でした。
「ざんねんでした。おとうさんでした。」
父はこのように前置きしてから、所用で県内を走り回ったついでに、農家の直売所でいろいろな品物を買ってさきほど発送したので、受け取ったらすぐ開封して食べなさい、ということと、最近東京で夕食を共にすることがないのは、東京に来る要件がないのではなく、その日じゅうに県本部に戻って会議を開かなければならない案件が多いからである、ねんのため、ということを伝えてきました。食材で贖罪、というところでしょうか。

きょう届いた父からの荷は、内部からしみ出た謎の水分で箱の底がふやけてほぼ抜け、補強材入りのビニール袋に入った姿で届きました。父の手によるいちぢくの甘露煮を詰めた密閉容器の蓋がパッキング時にわずかに開いており、煮汁がすべて箱に滲みていたためです。他の荷物に迷惑をかけていないか気になります。

写真は、ボルチモアの野球場の観客席通路です。

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10月23日 (火)  定本食道楽のこと

過日来、まうかめ堂さんとのあいだで話題になっていた上野動物園の謎の動物(仮称デッパリス)は、その後、東京じゅうの動物園および動物公園で飼育されている動物を検索できるデータベースを駆使して調査した結果、アメリカヤマアラシ科に属するカナダヤマアラシという飼育動物であることがわかりました。

上野動物園には、動物の習性にそった動物の飼育・展示のために、ヤマアラシがじぶんで樹に上ってくらせるよう、樹の下が寝る場所、樹の上が暮らす場所というカナダヤマアラシの展示施設があるようです。もし、カナダヤマアラシがなにか野心(もしくは郷愁心)を抱いても、樹の枝は刈り込まれていて、上った樹の枝伝いに逃走することはできないようになっているとのことでした。

なお、まうかめ堂さんからはその後、デッパリスの活用形をいろいろ教えていただきました(ラテン語は名詞も活用するのだそうです)。デッパリーやデッパレースやデッパリブスなど種々の活用形のうち、デッパリウムという響きがたいへん気に入りました。

きょうは、アーキビストの見習いの仕事から家に帰る途中の古本屋さんで、村井弦斎の「定本食道楽増補 註釈つき」の当時のものが売られているのを見つけ、うまうまと買って帰りました。この本はおそらく4冊で1揃のはずですが、3冊しかなかったので、いくぶん求めやすい価格になっていたのでしょう。

「定本食道楽」は、啓蒙小説もしくは恋愛小説の形をとりながら、西洋料理のこしらえ方や、西洋料理のための素材の選び方、西洋料理の滋養や効能、西洋料理の作法などがわかりやすく書かれている本です。求めてきた本は明治37年の9版ですが、初版は明治36年です。

初版からの体裁の変遷は調べたことがありませんが、この「増補 註釈つき」は、本の上から3センチほどが註釈欄になっており、小説中で紹介されている実用的な部分(調理法や調理の注意点など)が抜き書きされています。また、既出箇所には参照すべきページが書かれており、調理書としてたいへん実用的なものです。

現在のところ、お嬢さんは休息を必要としていながら、いろいろの理由でゆっくりできる時間をなかなか摂ることができません。せめてこの本を電車の中などでゆっくり読んで、ちいちいと憂いを忘れてみようと思います。

和綴じ本は存外丈夫ですが、ふしぎな本を読んでいる姿にびっくりされないよう、表紙にカバーなどかけて持ち歩こうと思います。

写真は、ボルチモアにあるオリオールズのホームグラウンド周辺 の試合前のにぎわいです。牛の扮装をしているのは、シャツから判断するに鶏肉消費推進委員会もしくは鶏肉生産業者のような団体で、その意味するところは、「ぼくがかわいいと思ったら、ぼくが食肉にされないよう、かわりにチキンを食べて下さい」ということなのだと思います。

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10月21日 (日)  針仕事のこと

せんだっての日記で、上野動物園で撮影した動物の写真を掲載したところ、まうかめ堂さんから、あの動物はいったい何なのですかというおたずねをいただきました。

りすの類い、とか、ねずみの類い、とか、おおまかなカテゴリーだけでもわからないでしょうかということなのですが、あいにくなんの情報もありません。とりあえず暫定的な名前をつけましょうということで、お嬢さんが写真の動物の口元の歯ならびにちなんでデッパリスという名前を提唱すると、まうかめ堂さんは音の響きがギリシャ風、またはラテン語の活用風であると、たいそう気に入って下さったようでした。

そのようなわけで、まうかめ堂さんはホームページの冒頭の写真を山羊に換えてみたもののようです。この山羊は上野動物園のこどもどうぶつえんにおります。しかし、なんどか既述しましたように、お嬢さんは山羊にあまり信をおいていません。

音楽会以降、お嬢さんの体調はすこし恢復したようでしたが、きょうは大事をとって家におり、針を動かしておりました。

現在こしらえているのは、「猿ぽぽ」もしくは「這赤子」と呼ばれている、腹掛けをつけた小さな人形です。これは、祖母から、ちょっと用いたい要件があるので作ってくれまいかと依頼を受けてこしらえているのですが、何に用いるのですかとたずねても頑として教えて下さいません。ひとがたをしているためか、たいへん気になるところです。

きょうは、昼から夕方にかけて、腹掛けを5枚こしらえました。夕食をとってから、こんどは身体部分をこしらえる予定です。

写真は、デッパリスと同じ日に上野動物園で撮影した大きな鳥の群れです。デッパリス同様、この鳥も動物園のなかの柵のない部分(大きな蓮の池)におりました。

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10月19日 (金)  3番ソナタのこと

ほんとうは、2日ほど前、へちまの料理法に関して日記を書いたのですが、画面に文章を入力し、写真を選択し、いざ送信ボタンを押したところでモデムの具合が悪くなりました。

ハングアップ状態であれば、モデムの電源を一度切り、ふたたび電源を入れれば送信できるはずであると思っていましたが、そのようではありませんでした。そのため、画面上においては、これが10月初の日記になります。

先週の中頃から、お嬢さんは心身(おもに身体)の調子が下降しはじめ、今週は月曜日と水曜日のお仕事を欠席してしまい、火曜日と金曜日は開始時間までに作業室までたどりつくことができませんでした。

なにか変な汗をかき、身体が非常にだるくてふさいでしまうのですが、とまうかめ堂さんに相談すると、まうかめ堂さんから、秋もしくは秋から冬にかけて心身のぐあいが低下する病気があり、それは投薬によって改善されるものなので、ぜひお医者さんにでかけてみるべきだというアドバイスをいただきました。そのようなわけで、昨日は仕事のあと、予約をしてかかりつけのお医者さんにでかけてみました。

かかりつけのお医者さんは予約制で、身体症状が主であるばあいと心身症状が主であるばあいとで予約コードがちがいます。心身症状が主である旨の予約をしておいたところ、お医者さんは時間をかけて相談を受け付けて下さり、変な汗、という部分は大きな病院での定期検診(もうすぐです)を待つことにして、ふさいでしまったりだるかったりする部分については、とりあえずよく睡眠を摂りなさい、と、寝付きをよくするお薬を処方してくださいました。

「決して入浴前に服用してはいけませんよ。浴槽で寝付いてしまうことがありますから」と薬剤師さんから注意をうけたので、寝台にもぐってから1錠飲み込みましたが、寝付きはふだんとさほど変わりません。1週間服用してみて、変化が見られないようであれば再診してくださいということでしたので、すこし様子をみてみようと思います。

きょうは、仕事のあと、街の音楽ホールにピアノの演奏会を聴きにでかけました。

音楽ホールは、東京の都心で仕事をしておられる方であれば、終業時間と同時に席をたてば開場時間に間に合うぐらいの距離にあります。小腹ふさぎにパンを買って音楽ホールに着くと、ロビーにはお嬢さんと同じような思惑か、パン袋を持った会社員ふうの方々がたくさんおられました。座席は指定席ですが、パンをかじる場所はあまりありませんので、目配りしながら場所をさがすことになります。

きょう演奏されたのは、シューマンのこどもの情景と、ベートーヴェンの31番ソナタ、モンポウという作曲家の小品と、ショパンの3番ソナタでした。

心身のぐあいが万全ではない中、きちんと音楽を聴くことができるか心配でしたが、よい演奏が、いわば点滴のように作用したようで、帰り道からお嬢さんの元気はいくぶん恢復したようです。ソナタ形式はいろいろな意味においてよいものであると思いました。

写真は、おそらく昨年の今ごろ、上野動物園で撮影したものです。これは飼われているのか、上野の森にもとからいるのかわからない動物でした。

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