Diary 2007. 5
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5月17日 (木)  のりすごしのこと

あたらしいアーキヴィストのお仕事をはじめてから、あしたでちょうど3か月になります。

史料のおいてある部屋の片付けとセットアップからはじまった作業も、役割分担をしたり、用具をより便利なものに替えていただいたり、あたらしい史料がみつかったりといろいろな出来事がおこるなかで、ちゃくちゃくと進んでいます。

それらの成果は本のかたちで出されるほか、いろいろなところで活用されることになるようです。

アーキヴィストというお仕事には、昨今すこし目がむけられるようになりました。海外でディプロマを取得したことや、なにか大きな史料公開プロジェクトの立案にかかわったりしたことを「肩書き」にして、お話をしたりコンサルタントをしたりする方もおられますが、お嬢さんの触角はその方向にはあまり向きません。

なんといいますか、お嬢さんは、企画を打ち上げたり風呂敷を広げたりすることより、蓆の上の30キロのぜんまいの綿毛をもくもくと取り除いて太さを選別するような作業を好むようです。

アーキヴィストの仕事において、身に蓄えられる智慧の分量は、史料のために手を動かした時間に確実に一致するものであるように思われます。よい機会を与えられたことに感謝しながら、これからも作業を続けなければなりません。

いっぽう、早起きや、お休みが一日減ったことによる心身のくたびれもだんだん蓄積されてきたようです。

今日は、帰宅の電車ではじめて乗り過ごしをしてしまい、となり駅のすこし手前で目が醒めました。写真は郷里の猫の、寝ているか起きているかの境目あたりを撮ったものですが、電車の中のお嬢さんはおそらくこんなふうであったものと思われます。

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5月16日 (水)  山菜加工のこと 2

昨日は、山菜についての話のうち、ぜんまいの形態と、ぜんまいの加工のいちばんはじめの作業であるぜんまい部分の綿毛のとりかたについて書きました。

綿毛をとったぜんまいは、次に、沸かした湯に入れて軽く茹でます。

父は山に入るたび、30キロ近くのぜんまいを採取して帰ってきますので、綿毛採りもたいへんな作業ですが、綿毛をとったぜんまいをゆでるのもたいへんな作業です。

お嬢さん一家が現在の家に引っ越してくる以前の家では、庭に大きな移動式竈をおいて大きな釜をかけ、庭でぜんまいをゆでてすぐに蓆に広げることができました。

この竈と釜は、大量の餅をついたり、数年に一度味噌を仕込んだりするのに欠かせないものでしたが、引っ越し先の現在の家の収容能力と使用頻度を勘案した結果、引っ越しの際人にさしあげてきました。現在は台所に大きな鍋をかけ、家庭用の火力で茹でることになっています。

お嬢さんの家にある鍋のなかで最大の鍋は、夏にとうもろこしをゆでる時に用いているもので、一度に7〜8本のとうもろこしをゆでることができます。それでも、30キロのぜんまいを茹で上げて干すには、前庭と台所を7〜8往復しなければなりません。

祖母はだいぶん腰が曲がりましたので、沸いた鍋にぜんまいを入れ、ころあいを見て引き上げて前庭に運ぶ作業はお嬢さんが担当するようになりました。

写真は鍋の中のぜんまいのようすです。ぜんまいには、わらびほどではありませんが「あく」があり、茹で汁はこのような赤茶色になります。





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5月15日 (火)  山菜加工のこと

連休のあいだ、お嬢さんの一家は、父の趣味であり一家にとってのたいせつな作業である山菜の採取と加工に明け暮れていました。

父が山に入ってとって来るのは、ぜんまいという山菜です。山菜おこわや、韓国料理のビビンバに入っている茶色の茎状のものがそれです。

ぜんまいは、採取したままの状態ではたいへん繊維がかたく、そのまま茹でただけでは食材にすることができません。ぜんまいを食材にするには、切り干し大根をこしらえる要領で、ぜんまいを茹で、よく揉みながら乾燥させる必要があります。

この加工過程にはたいへんな時間と手数がかかります。そのため、きちんと食材の状態になるまで乾燥させたぜんまいはたいへん高価にやりとりされており、じょうずに乾燥させたものにはキロあたり2万円近い値段がつくこともあります。

お嬢さんの家では、行事食やごちそうのおり、ぜんまいを用いた料理をたくさんこしらえます。父が採取し、家族で乾燥させたぜんまいは、このようなおりにたいへん役立ちます。

写真は、加工される前の、山からとってきた状態のぜんまいです。ぜんまいという名前は、茎の上部の、葉がくるりと巻いた状態に由来するものと思われます。

写真では、ぜんまいのぜんまい部分が見えておりますが、山に生えているときには、この部分はふんわりした綿毛にくるまれています。

ぜんまいの加工においてもっともたいへんな作業のひとつは、ぜんまいの頭の部分の綿毛をひとつひとつ手で取り除く作業です。綿毛はぜんまいの頭にしっかりと巻き込まれており、一度にぺろりと取り除くことはできません。

お嬢さんはごく小さなころから、ぜんまいを山のように広げたむしろのそばに祖母とちんまりと座り、祖母といっしょにぜんまいの綿毛を取り除く作業を手伝うことがたいそう好きでした。

山のように見えるぜんまいも、せっせと作業をしてゆくと片付けることができます。むしろの上のぜんまいがすっかり片付くと、両手でかかえるほどの綿毛が残り、それはお嬢さんのよいおもちゃになっていました。

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5月14日 (月)  巻き髪のこと

きょうは、仕事のあと、定期的に通っている美容室にでかけました。お嬢さんはこのごろ、美容室に2か月に1回通うようになっています。

お嬢さんは、生まれてからいちどもパーマをかけてみたことがありません。また、髪を染めたこともありません。ふだんはゆるゆると髪をのばしており、のび方に応じて、ヘアバンドでとめてみたり、うしろにまるめてみたり、前髪をとめて流したりしています。

高校生のおりには校則があり、髪はさほどの長さではありませんでしたが、大学生になったおり、髪はどこまでのびるものか、一度ためしてみたことがあります。

3年ほど切らずにまかせていたところ、はじめはやっと肩に付くほどであった髪は、ずるずるとのびて膝裏を超えました。

日常生活に支障をきたすようになり、また、長い髪が原因と思われるすこし困った出来事も生じるようになったため、思いきってもとの長さに切り詰めたところ、いちどに体重が2キロ減少し、おどろいた記憶があります。

切り落した髪は、理容室を通じてぜひにという申し出があり、漆器を塗る職人さんにもらわれてゆきました。いまでも家族を通じて賀状のやりとりがあります。

そのようなわけで、お嬢さんの美容室通いには、とくに確乎たる髪型に対する意志があるわけではありません。髪をあらっていただき、つや出しをして、適度に量と長さを整えていただくとできあがりです。

きょうは、つや出しのあと、美容師さんがためしにやってみましょうかと言い、ヘアアイロンを持ち出してきてお嬢さんをくりくりの巻き髪にしてくださいました。これはこれでなかなかよい感じです。ヘアアイロンは昨今安価なので、買えばかんたんにできますよとすすめられ、現在迷っているところです。

写真は、中庭の日陰にさいている花です。山野草の一種で、きちんとなまえもあるようなのですが、うっかり忘れてしまいました。

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5月13日 (日)  顔用化粧油のこと

何日か前の日記では、帰京直後から顔の皮膚にかぶれが生じたことを書きました。

ふだん顔の手入れに用いている化粧品を次々はずしてゆき、その結果をおっていったところ(これは、パソコンの調子が悪くなったとき、プラグインを次々外していってコンフリクトをしらべる方法と似ています)、原因は当初考えていた日焼け止めではなく、洗顔後すぐに用いていた化粧水のためであることがわかりました。

この化粧水は花梨の種のエキスをアルコールに漬け込んだもので、肌荒れによいですよということでいただいていたものでした。お嬢さんは皮膚から吸収されるアルコールに非常に弱く、そのためにかぶれが生じたものと思われます。

化粧水を、これまで用いていたアルコール成分なしのものに戻し、さらに、就寝前に顔用化粧油を塗りこんで眠ることを続けた結果、かぶれはほとんどおさまりました。

顔用化粧油は、フィレンツェにあるサンタマリア調剤薬局堂製のものです。なつかしいようなお化粧の香りがする黄色の油が小さな容器に入っており、容器の頭部を2回ほど押してでてきた分の油を手でよくあたため、油のついた手で顔をおおうように塗布します。当初はたいへん油気を感じますが、朝になると油気はほとんど残っておらず、のんびりよい香りだけが残っています。

いわゆる「最後の晩餐」のおり、女がイエスに頭から注いだ香油というものはこのようなものかもしれない、と、ふと考えました。

写真は、郷里の中庭の木の陰に植えられているクリスマスローズです。これは、お嬢さんが現在くらしている家の大家さんから種をいただいたもので、種からはじまって少しづつ育ち、昨年あたりからよく殖えて花を咲かせるようになりました。もうだいぶん時期をすぎており、種になる部分がふくらみはじめています。

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5月11日 (金)  ねぎまぐろのこと

きょうは、いちばん長い間アーキヴィストの見習いをさせていただいている研究所にでかけました。

いちばん新しいアーキヴィストの見習いの仕事にたくさん時間を使う必要があるので、ここ2月ほど、研究所にでかける日数と時間は減るばかりでした。なにが途中で、なにをこれからする必要があるのか、思い出したり優先順位をつけたりしながら、ひそひそと作業をして、終業時間までにいくつかの用件を済ませることができました。

帰途、駅のなかにある商店街ビルのなかの鮮魚店をのぞいてみたところ、たいへん新鮮なまぐろのあらを発見しました。さっそく買って帰り、夕食のあとで調理にとりかかりました。

どのような調理をするにしても、まぐろのあらは、まず湯引きをしなければなりません。適度な大きさに切ったまぐろのあらに強い塩をふってすこし置き、鍋に湯がわいたところで切り身をひとつづつ入れ、さっと湯を通して水をはったボウルに放します。不精をしていちどに切り身を放り込むと、湯の温度が急に下がり、魚臭さがあまり抜けません。

湯引きをしたあとのまぐろのあらは、生姜をたくさん入れ、朝食の友になるような甘辛く濃い味に煮付けようと思っていました。ところが、ずっと以前に買ってあった根生姜は、野菜室のなかで野菜としての寿命を終えておりました。おろし生姜の買い置きもありません。

そのため、きょうは予定を変更して、一部をねぎとまぐろの味噌汁にし、残りは冷蔵庫に保存して、あす、生姜の購入を待って煮付けることにしました。

ねぎとまぐろの味噌汁は、いわゆる「ねぎま汁」を味噌仕立てにしたものです。大きな切り身がごろごろと入っており、七味をふって味見をしてみると、たいへんあたたかく、かつ滋養のある出来になりました。

あすは、忘れずに生姜を求め、煮付けをこしらえてみようと思います(ねぎと擂って団子汁にするかもしれませんが)。

写真は、前庭の道路に面したところに植えられている白椿です。庭には白椿のほか、赤や斑入りなど、たくさんの種類の椿が植えられています。

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5月10日 (木)  うちあわせのこと

きょうは、すこし前に書いた、あたらしいアーキヴィストの見習いの仕事について、現在の進行状況の報告と、今後の作業予定についての検討のためのうちあわせがありました。

帰京してからすぐ、お嬢さんはその報告準備におわれてばたばたしておりましたが、今日はつつがなく報告をすることができました。

打ち合わせの場所には、その日作業に来て下さっている方々のほか、史料の整理を依頼して下さった側の責任者の方がおふたりと、この作業全体の指揮をとって下さる先生が集まりました。

ふだんですと、打ち合わせが終わると食事をして解散になるところを、きょうは先生が作業室に残って下さり、文字の解読や参考文献の指示をして下さいました。

読み方がこれでよいのか心細かった箇所について、先生がざっと目を通して下さったことで、心持ちはずいぶん楽になったように思われます。

写真は、前庭に咲いているチューリップと鯛釣草です。前庭には、チューリップやすいせんなどの球根植物が多く植えられているほか、夏にはてっせんやふうせんかずらなど、涼しい感じのするつる植物が咲きます。

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5月9日 (水)  椎茸の木のこと

帰郷しているあいだは、朝食のあとで顔を洗って、洗面台にあったそのあたりの化粧品類を用いて手入れをしていたのですが、帰京そうそう、なにかのひょうしに顔の皮膚にかぶれのようなものが生じてしまいました。

今年はじめて用いた日焼け止めが原因かもしれませんが、頬のかゆみと肥厚感が続くのはすこしこまってしまいます。

郷里の庭のうち、南庭には樹木が多く、その木の下はよい日陰になっています。それらの日陰も有効活用されて、日陰むきのいろいろな植物が植えられています。

日のあたる時間がもっとも少なく、すこし湿気の多い場所には椎茸の木が立ててあります。この木は毎年猫の山里からいただくものです。

椎茸の木とは、ナラなどの木に孔をあけ、椎茸菌を植え付けたもので、木の養分の続く限り、だいたい3年ほどにわたって、季節を問わずのんびり椎茸が発生します。お嬢さんは椎茸の木をめぐり、成長を観察しては大きくなったものを収穫するのがたいへん好きなので、家族は帰郷のすこし前から椎茸の収穫を止めて、お嬢さんを待っていて下さいます。

写真は、椎茸の木から椎茸が生えているようすです。春に出る椎茸は肉厚ですが、このようにいくぶんか乾燥気味に生えてくるようです。木の年月が経過し、いちどに生える椎茸が多いほど、ひとつひとつの椎茸は肉薄になるように思われます。

何年か前、お嬢さんは正月そうそう、初夢として、じぶんの腕から椎茸の木のように茸が生えてくる夢をみたことがあります。いわゆる「収穫」してもなにも痛くなく、すぐまた次代の茸が出てくるのがおもしろくもありました。

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5月8日 (火)  あけびの花のこと

お嬢さんの家の庭でもっとも広いのが南庭です。

ずっと以前、家族でこの家に引っ越してきたとき、この場所はたいらな地面になっていました。その後、土を盛ってちいさな築山をこしらえ、その山には、植木鉢に植えていたけれども少し大きくなった植物を直植えするようになったものです。

また、直植えを目的としてはじめから苗木を買ってくることもありました。

地面から生えるようになった植物が大きくなる力は植木鉢時代よりずっと旺盛で、築山の植物の中には一階の屋根を大きく超え、二階からでないと花見ができなくなっているものもあります。

現在、築山に生えているのは橡の木、紫木蓮の木、枇杷の木、藤の木です。また、橡の木にからまるように、あけびの木も生えています。

写真はあけびの花です。あけびの花には雌雄があり、この写真で大きく写っているのは雌花です。中央の、柱頭が蜜で光っているめしべがその後大きくなり、実になります。

あけびの花は深い色合いであるいっぽう、たいへんよい香りがします。似た香りはあまり見ませんが、みかんの花の香りと葛の花の香りを合わせたような香りがあり、なにかうっとりするような、せつない感じがします。

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5月7日 (月)  庭のこと

きょうは朝早く目が醒めたので、でかける前に日記を書くことにいたしました。

お嬢さんの郷里の家は、いわゆる古民家というわけではまったくありませんが、建てられてからもうすぐ40年ちかくになる古い住宅です。すこし急いで引っ越しをする理由があったらしく、すでに建っている家を選びました。

お嬢さんの祖父はたくさんの植木を持っていたため、住宅を選ぶにあたっては、植木をたくさん置くことができる広い場所があることと、お嬢さんたちが学校に安全に通うことができることが優先されました。

現在の家には、すまいの3倍ほどの庭(正確には花壇とちいさな菜園と物置があるだけです)がついています。

庭は大きく、西庭、東庭(これらは小さい庭です)、前庭(これはほぼ車寄せです)、南庭に区分されています。もっとも広いのが南庭で、ここには物置と菜園と物干台があります。

写真は、南庭と車道とのさかいめのあたりにうえられている芝桜とムスカリです。この少し外側には梅と柿とあじさいが植わっており、生け垣のかわりになっています。

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